大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(行ナ)112号 判決

一、被告は登録第二三三五七八号商標の商標権者であるところ、原告を被請求人として別紙表示の(イ)号商標について原告主張のとおりの商標権の権利範囲確認審判を請求し、原告主張の日に原告主張の内容の審決を得、その謄本が原告主張の日原告代理人に送達されたことは、当事者間に争がない。そして、成立に争のない甲第三号証(更新登録商標公報)によれば、被告の前記登録第二三三五七八号商標は通常の書体(右肩上り)で「アサヒライト」の片仮名文字を縦書して成るもので、旧第一三類硅藻土其の他本類に属する商品一切を指定商品とし、昭和七年四月八日登録、昭和二六年七月二六日更新登録にかかるものであることが明らかであり、ゴジツク体の「アサヒライト」の片仮名文字を横書して成る別紙表示の(イ)号商標とは、書体および縦書か横書かの構成において異なるとはいえ、「アサヒライト」の称呼を共通にする類似の商標であるといわなくてはならない。

二、原告は、まず被告の本件確認審判請求は「(イ)号商標をセメント混和材、防水材たる硅藻土に使用すること」についてされたにかかわらず、審決が「商品硅藻土(セメントの混和材、防水材たる)に使用する(イ)号商標」について判断したことは、審判申立以外の事項について判断した違法がある、と主張するが、本件審決主文中「セメントの混和材、防水材たる」という括弧内の文言は、その上にある「商品硅藻土」を限定的に説明した形容句であることが明らかであつて、原告の主張するように「商品硅藻土」の例示であるとはとうてい読むことができないから、審判請求にあたつて用いられた「セメント混和材、防水材たる硅藻土」も、審決でいつている「商品硅藻土(セメントの混和材、防水材たる)」も、同一商品を表現を変えていつたに過ぎず、本件審決が審判請求にかゝる以外の事項に関してなされた事実はないといわなくてはならない。

三、次に原告は、本件確認審判における(イ)号商標を使用する商品は本件登録商標の指定商品である旧第一三類に属する商品とは別異のセメント防水剤、セメント混合剤、セメント念結剤であつて、旧商品類別第七〇類に属するところ、原告は右商品を指定商品としてその主張の登録商標権を有するので、(仮に右商品が旧第一三類と旧第七〇類との両類にわたるとしても、)原告が(イ)号商標を右商品につき使用することはその権利の行使である、と主張するので、この点について考える。大正一〇年農商務省令第三六号商標法施行規則第一五条で定められた商品類別(いわゆる旧類別)第一三類には「漆喰及土砂ノ類」とあり、「漆喰、『セメント』、石膏、土瀝青、土砂、火山灰等」と例示されているので、単細胞藻類の死滅した珪酸殻遺骸からなり、吸収剤、吸着剤、脱脂剤、瀘過材、保温材、研磨材、化学用およびセメント混合材に用いられる(これらのことは成立に争のない乙第七号証の二の吉木文平著「鉱物工学」の記事によるも明らかである。)珪藻土(硅藻土)が、右旧第一三類に属することは、明らかである。そして、旧類別第七〇類は「他類ニ属セサル商品」とあるので、旧第一三類に属する硅藻土は、旧第七〇類には属しないものというべく、かつ原告の仮定的に主張するように同一商品が旧第一三類と旧第七〇類との両類にわたつて存するということもありえない。本件確認審判において(イ)号商標を使用する商品として表示された「セメント混和材、防水材たる硅藻土」あるいは「商品硅藻土(セメントの混和材、防水材たる)」がセメント混合材に用いられる前記硅藻土を指称するものであることは、本件口頭弁論の全趣旨に徴し明白である。証人渡辺英夫の証言および原被告代表者各本人尋問の結果によれば、セメント混合材として使用される硅藻土には、特に粒子の細かい良質のものが要求されることが認められるが、そうかといつてそれが硅藻土以外の他の商品であるとすることは相当でない。原告は、セメント混合材たる硅藻土は原料硅藻土につき多大の経費を投じてその主張のような数段階の加工を施し、化学反応を期待しうる一定の材質のものとしたものであり、原料硅藻土とは別異の商品である、と主張する。しかし、前記渡辺証人の証言および原告代表者本人尋問の結果によれば、原告会社が現実に本件(イ)号商標を使用している商品の製造工程も、まず硅藻土原土から土砂その他の不純物を除去し、天日乾燥したのちに製粉機にかけて粉状とするものであることが明らかであり、要するにそれは粉状の硅藻土であるといわなくてはならない。右の事実と前記乙第七号証の二の、珪藻土はセメント混合材として使用される旨の記載とをあわせ考えれば、本件確認審判において(イ)号商標を使用する商品として特定されたものは、右の意味の硅藻土であつて、旧商品類別第一三類に属し、旧第七〇類には属さないものと解するのが相当である。成立に争のない乙第二号証の一(中村威の顕微鏡観察結果)、証人渡辺英夫、田中市治郎の各証言によつてそれぞれ成立を認め得べき同第一〇、第一一号証(豊州珪藻土株式会社および合資会社田中珪藻土工業所の各証明書)に前記両証人の証言および原被告各代表者本人尋問の結果をあわせ考えれば、原告が以上に認定した粉状硅藻土に本件(イ)号商標を使用して販売している事実が明らかである。原告は、右は原告の有する登録第四〇〇六九八号商標権の行使である、と主張し、原告が本件登録商標と同じ「アサヒライト」の片仮名文字を通常の書体で縦書してなり、旧第七〇類セメント防水剤、セメント混合剤、セメント念結剤を指定商品とする登録第四〇〇六九八号商標の現在の商標権者であることは、成立に争のない甲第五、六号証(商標公報および商標原簿謄本)によつて明らかであるが、前記商品が旧第一三類に属し、旧第七〇類に属さないこと、前に認定したとおりであるから、原告の右主張は理由がない。したがつて、本件登録商標の商標権者である被告がその指定商品に属する商品硅藻土(セメントの混和材、防水材たる)について右登録商標に類似する(イ)号商標を使用している原告を被請求人とし、本件商標権の権利範囲確認審判を請求することは、正当の利益があるものというべく、右請求は適法のものといわなくてはならない。

四、最後に、本件確認審判において(イ)号商標を使用する商品として表示された商品は旧商品類別第一三類に属し、旧第七〇類に属さないこと、前に認定したとおりであるから、右商標の使用が旧第一三類に属する商品を指定商品として登録された本件登録商標の権利範囲に属する、とした本件審決は、商品の判断の点において、なんらの違法がないというべきである。

五、これを要するに、本件審決にはなんらの違法の点が見出せないから、その取消を求める原告の請求を理由のないものと認める。

〔編註〕本件に関する(イ)号商標は左のとおりである。

(イ)号商標

<省略>

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